挨拶に訪れた家の表札が目に入った。ひょっとすると、脳裏に過った女性。

インターホンを押し、しばらくすると年老いた女性がゆっくり現れた。現れた姿に過ぎた年月を感じた。

6年前に他界した親父の友人だ。ひとしきり親父の話を懐かしそうに話されていたお婆さん。

曲がり始めた身体、人の世話にならないと生きていけない年、身体になってしまったと寂しそうに話されていたお婆さん。

多くの人を世話した分、多くの人に世話になる。

お婆さんにまた寄るからとお婆さん宅を後にした。